NASAが推進したスペースシャトル計画において、特に重要な役割を担った機体に「ディスカバリー」があります。このオービタ（宇宙空間を行き来する機体）は、1984年の初打ち上げから長年にわたり、宇宙への夢を運び、数々のミッションを成功させてきました。多くの日本人宇宙飛行士も搭乗し、人類の宇宙開発の歴史にその名を刻んでいます。
宇宙への架け橋 ディスカバリーの歩み
ディスカバリーは、スペースシャトル・オービタの3号機として、1984年8月30日に初めて打ち上げられました。以後27年間にわたり、実に39回ものミッションを成功させ、NASAの宇宙事業の中核を担い続けました。その長いキャリアの中で、国際宇宙ステーション（ISS）の建設やハッブル宇宙望遠鏡の打ち上げ、修理など、数多くの重要な役割を果たしてきました。
チャレンジャー号の爆発事故で命を落としましたが、彼の功績は宇宙開発の歴史に深く刻まれています。他にも、向井千秋さん、若田光一さん、野口聡一さん、星出彰彦さん、山崎直子さんといった日本の宇宙飛行士たちがディスカバリーに乗り込み、宇宙での研究や作業に貢献しました。
長きにわたる活躍の後、ディスカバリーは2012年4月20日に引退を迎えました。そして現在、その機体はワシントンD.C.近郊にあるスミソニアン航空宇宙博物館で一般に公開されています。引退時には、特別に改造されたボーイング747型機に背負われる形で輸送され、その様子を捉えた写真は、ディスカバリーの威容と共に多くの人々に強烈な印象を与えました。
複雑なコックピットと宇宙飛行士の訓練
宇宙船の操縦は、一般の乗り物とは比較にならないほど複雑です。ディスカバリー号のコックピット内の写真を見ると、そこには無数のボタン、スイッチ、モニターが整然と、しかし圧倒的な数で並んでいます。
例えば、自動車であればアクセルやブレーキ、ハンドルといった基本的な操作方法はすぐにわかりますが、スペースシャトルの場合、「どうやってブレーキをかけるのか」「そもそもエンジンはどうやって始動するのか」といった初歩的なことすら、私たちには想像もつきません。これら全ての機器を正確に、そして瞬時に操作できる宇宙飛行士たちは、計り知れないほどの専門知識と、それを習得するための厳しい訓練を積んでいることがうかがえます。彼らの訓練は、単なる技術習得にとどまらず、極限状況下での冷静な判断力や対応能力も求められるため、非常に過酷なものです。
また、宇宙飛行士が長時間のミッション中、座り続けることになる操縦席も、私たちの想像とは異なるかもしれません。
快適さよりも、機能性、安全性、そして機体の軽量化が最優先されているため、座り心地が良いとは言えないでしょう。限られた空間と資源の中で、宇宙での任務を確実に遂行するための、徹底した実用主義に基づいた設計がそこにはあります。
宇宙への驚くべき速さ
地球の重力に逆らい、巨大なロケットの推進力で宇宙へと飛び立つスペースシャトル。その発射から、高度約100キロメートルの宇宙空間に到達するまでの時間は、驚くほど短く、わずか8分30秒ほどです。この数字は、私たちが普段利用する交通機関の移動時間と比較すると、その速さがより実感できます。例えば、東京都心の主要駅である池袋から渋谷まで電車で移動するのにかかる時間は約11分。また、人気テーマパークのアトラクションで1時間以上列に並ぶことも珍しくないことを考えると、地球の引力を振り切って宇宙へ飛び出すまでの時間が、いかにあっという間であるかがわかるでしょう。この事実を知ると、遠い存在に思える宇宙が、ぐっと身近に感じられるかもしれません。
まとめ
ディスカバリーは、その27年間の歴史の中で、人類の宇宙開発において計り知れない貢献をしてきました。多くのミッションを通じて科学的知見を深め、また多くの宇宙飛行士の夢を乗せて宇宙へと飛び立ちました。
宇宙への興味は尽きませんが、もし将来、月面に人類が移住するような日が来たとしても、一つ注意すべき点があります。月の砂は、地球上の砂とは異なり、非常に細かいガラスのような構造をしているため、目や肺に入ると危険だと言われています。まだ研究段階ですが、宇宙での生活には想像以上に多くの課題がありそうです。