私たちが普段手に取るトランプは、世界中で親しまれているカードゲームの象徴です。多くの方がご存じの通り、スペード、ハート、ダイヤ、クラブという4つのマークと、AからKまでの数字で構成される52枚に、ジョーカーが加わるのが一般的でしょう。しかし、世界には、私たちが知るトランプとは少し異なるデザインや、それぞれのカードに込められた豊かな歴史を持つ、多様なトランプが存在します。今回は、そんなトランプの奥深い世界を少し覗いてみましょう。
世界で出会う多様なトランプ
まず、私たちが慣れ親しんだトランプのデザインは、実は「フランスタイプ」と呼ばれるものの一つです。これに対し、例えばイタリア、スペイン、そしてラテンアメリカ諸国では、全く異なるデザインのトランプが使われています。これらの地域で用いられる「ラテンタイプ」のトランプは、杖、剣、カップ、貨幣という4つのユニークなマークが特徴です。
これらのマークは、それぞれ、日本で一般的なトランプのスペードを剣、ハートをカップ、ダイヤを貨幣、そしてクラブを杖と対応させることができます。慣れないうちは少し戸惑うかもしれませんが、それぞれの文化圏の歴史や生活様式が反映された、興味深いデザインと言えるでしょう。この他にも、ドイツタイプなど、地域によってさまざまなデザインのトランプが存在します。
トランプの基本 カードの呼び方と強さ
トランプを語る上で、カードの呼び方やそれぞれの強さの序列も基本です。数字の1は「エース」、2は「デュース」、3は「トレイ」、4は「ケイト」、5は「シンク」、6は「サイス」、7は「セブン」、8は「エイト」、9は「ナイン」、そして10は「テン」と読みます。絵札は、Jが「ジャック」、Qが「クイーン」、Kが「キング」ですね。
カードの強さについては、一般的にはマークの序列があり、スペードが最も強く、次いでハート、ダイヤ、そしてクラブと続きます。ただし、国や地域、あるいは遊ぶゲームによっては、クラブが最も強いとされる場合もあります。数字と絵札の強さは、A(エース)が最も強く、K、Q、Jと続き、数字の10から2へと順に弱くなります。
各マークに込められた歴史と人物像
私たちが使うトランプの4つのマーク、スペード、ハート、ダイヤ、クラブには、それぞれ意味があり、絵札には歴史上の人物や神話の登場人物が描かれていると言われています。単なる遊び道具以上の、深い物語が込められているのです。
♤スペードが象徴するもの
スペードは、騎士や貴族、そして貴族の「剣」を象徴すると言われます。季節では「冬」を、また「風の星座」(ふたご座、てんびん座、みずがめ座)を意味するとも考えられています。
絵札の人物は、Kが古代イスラエルの国王「ダビデ王」、Qがギリシャ神話の戦いの女神「パラス・アテネ」、Jがカール帝国の騎士「オジェ・ル・ダノワ」とされています。
♡ハートが象徴するもの
ハートは、僧侶が教える「魂」や「聖杯」、そして「愛」や「感情」を表します。季節は「春」、そして「水の星座」(かに座、さそり座、うお座)との関連も指摘されます。
Kにはフランク国王「カール大帝」、Qにはユダヤの女戦士またはカール大帝の子の妻とされる「ユディト」、Jにはジャンヌ・ダルクの戦友「ラ・イル」が描かれています。
♢ダイヤが象徴するもの
ダイヤは、商人の「貨幣」や「経済力」を象徴するマークです。季節は「夏」を、そして「地の星座」(おうし座、おとめ座、やぎ座)を意味すると言われます。
Kは古代ローマの軍人、政治家「カサエル」、Qは旧約聖書のヤコブの妻「ラケル」、Jはトロイの王子「ヘクトル」とされています。
♧クラブが象徴するもの
クラブは、農民の「こん棒」や「勇気」、「仕事」や「努力」を象徴します。季節は「秋」を、そして「火の星座」(おひつじ座、しし座、いて座)と関連づけられます。
Kにはマケドニア国王「アレキサンダー大王」、Qにはシャルル7世の妻や愛人とされる「アルジーヌ」、Jにはアーサー王に仕えた円卓の騎士の一人「ランスロット」が配されています。
このように、トランプの各マークや絵札には、それぞれ異なる時代や文化背景を持つ人物が象徴されているのです。普段何気なく手にしているトランプが、実はこれほど豊かな物語を秘めていると知ると、遊び方もまた一層楽しくなるのではないでしょうか。トランプは単なるゲームの道具ではなく、私たちの歴史や文化を映し出す小さなアート作品とも言えるかもしれません。