私たちが普段、他人の顔を見て「魅力的だ」と感じる基準は、一体何によって決まるのでしょうか。実は、お酒の摂取がこの「魅力」の感じ方に大きく影響するという研究結果が複数報告されています。今回は、この興味深い現象について、二つの研究成果をご紹介します。
ローハンプトン大学の研究が示すアルコールの影響
イギリスのロンドンにあるローハンプトン大学の研究チームは、100人以上の男女を対象に、アルコールが人の魅力認識に与える影響について調査しました。参加者は以下の二つのグループに分けられました。
- 強いウォッカトニックを飲みながら質問に答えるグループ
- 味の似たノンアルコールドリンクを飲みながら質問に答えるグループ
両グループの参加者には、「異性の顔が左右対称か非対称か?」という質問がされました。この質問が選ばれた背景には、「左右対称の顔立ちが美しいと感じられる」という先行研究の報告があるためです。
実験の結果、ウォッカを飲んだグループの方が、異性の顔を「左右対称である」と答える人が多いことがわかりました。このことから、アルコールを摂取すると、他者がより魅力的に見える傾向があると言えます。特に男性においてこの効果が強く、女性に対して魅力を感じやすくなることが示されました。ただし、この研究では、アルコールが影響して成立したカップルの関係がどれほど長く続くかについては調査されていません。
マンチェスター大学が導き出した魅力の数式
イギリスのマンチェスター大学の研究チームは、「男性から見た女性の魅力指数」を表す数式を提示しています。この数式は、特定の条件下で他者がどれだけ魅力的に見えるかを示すものです。(男性がこの数式に当てはまるかは研究されていません。)
β = (An)^2 × d(S+1) / √L × (Vo)^2
この数式の各記号は次の意味を表します。
- An: アルコール摂取量
- S: 空気の汚れ具合
- L: 対象となる女性に対する照明の明るさ
- Vo: 視力
- D: 女性との距離
- β: 「ビール・ゴーグル効果」の大きさを示す値
ここでいう「ビール・ゴーグル効果」とは、アルコールを摂取すると、性的な欲求に対する抑制力が低下する効果のことを指します。β値が示す魅力の指標は以下の通りです。
- β = 1〜50: 目で見て不快に感じなくなる
- β = 51〜100: 普段何も感じない女性が魅力的に見えるようになる
- β = 101以上: スーパーモデル級の魅力があると感じられる
この数式からは、特定の状況を作り出すことで、より魅力的に見せたり、相手を魅力的に感じやすくなったりする要因が導き出されます。
数式から考える「魅力的に見せる」要因
マンチェスター大学の数式を基に考えると、自分を魅力的に見せるための具体的な要因は以下の通りです。
- アルコールの摂取量: アルコールの摂取量が多いほど、相手が魅力的に見える傾向があります。ただし、相手を危険にさらすほどの過度な飲酒は避けるべきです。
- 相手との距離: 相手との距離が遠いほど、魅力指数は高まるとされています。ある程度の距離感を保つことが有効かもしれません。
- 空気の汚れ: 空気が多少汚れている環境の方が、魅力的に見える可能性があります。これは、視覚的な情報が曖昧になることで、より好意的な印象を抱きやすくなるためかもしれません。
- 照明の明るさ: 照明がなるべく当たらない、暗めの場所にいると、魅力的に見えやすい傾向があります。これは、細部が見えにくくなることで、理想化されたイメージを抱きやすくなることと関連していると考えられます。
- 相手の視力: 相手の視力が低いほど、魅力的に見える効果が高まります。眼鏡を外している場合など、相手が物事をはっきりと見えにくい状況が、好意的な印象につながる可能性があります。
これらの要素は、努力せずに他者から魅力的に見られるためのヒントとなるかもしれません。ただし、これらの研究結果は、あくまでアルコールの影響や特定の環境下での一時的な「魅力」の認識に関するものです。
まとめ
今回ご紹介した二つの研究は、アルコール摂取や周囲の環境が、私たちが他人の魅力をどのように認識するかに大きな影響を与えることを示しています。特に、マンチェスター大学の数式は、具体的な要因が魅力認識にどう作用するかを数値で表している点がユニークです。
これらの知見は、お酒の席での人との交流や、デートの場所選びなどに役立つように思えるかもしれません。しかし、研究結果でも示されているように、アルコールが介在した関係が長続きする保証はどこにもありません。人の魅力は見た目だけでなく、性格や内面、相手との信頼関係によって築かれるものであり、一時的な印象だけで判断されるものではないことを心に留めておくことが大切です。