シャトルのコックピットがすごいと感じるような宇宙の魅力を通して、多くの人々に感動と学びを与えています。この作品は、学問的な知識だけでなく、人間が心の奥底で抱える様々な感情や葛藤（心の中で相反する感情がぶつかり合うこと）を深く描き出し、子どもから大人まで、幅広い世代の読者におすすめされています。
宇宙開発への疑問と六太の課題
物語の中では、有人宇宙飛行に対して、その成果が乏しいとして否定的な意見を持つ評論家が登場します。この評論家は社会的に大きな影響力を持っており、その意見を無視できない状況にありました。主人公の南波六太（なんばむった）は、この否定的な意見を持つ評論家に対して抗議文を作成するという課題を与えられます。これは、宇宙開発の意義をどう伝えるかという、重く難しい問いでした。
「なぜ人は宇宙に行くのか？」アリの次元を越える思考
この問いに答えるため、彼は私たちを「アリ」の世界に例えて説明します。
普通の一次元アリにとっては、そこが世界の終わりであり、それ以上進むことはできません。
それらのアリは、縦横の動きを手に入れ、新しい世界を知った「二次元アリ」となります。
このようなアリは「三次元アリ」となり、さらに新しい世界、つまり「上から見る」「下から見る」という別の視点を獲得するのです。
このたとえ話が伝えるのは、別の視点を持つことで、それまで解決できなかった問題に対する新しい解決策を見つけられるということです。六太は、宇宙に行くことで、地球上の問題をこれまでとは違う角度から見つめ直し、新たな解決策を見出すことができるのではないか、と考えました。
言葉ではなく行動で示す六太の答え
最終的に六太が出した答えは、評論家への抗議文を「白紙」のまま提出することでした。彼はこう結論づけます。「ガチガチの二次元頭の人に、三次元の魅力や意味は言葉じゃ伝わらないよ。」そして、解決策として「じゃあどうすればいいか？・・・それは宇宙（三次元）に連れて行くしかない。」と述べました。言葉で理解できない相手には、実際に体験してもらうしかない、という強いメッセージです。この言葉は多くの人の心を打ち、深い感動を与えました。
この言葉は、宇宙開発に携わる人々が、否定的な意見に反論するよりも、自らの行動と成果をもって宇宙の意義を示そうとしている姿勢を象徴しています。彼らは言葉の応酬に時間を費やすのではなく、未来を切り開くための具体的な行動にこそ価値があると考えているのです。
まとめ
「宇宙兄弟」は、シャトルの壮大な景色や宇宙開発の技術的な側面だけでなく、人間の可能性や挑戦する心、そして「別の視点を持つこと」の重要性を私たちに教えてくれます。六太とJAXA局長の言葉は、言葉だけでは伝わらない真実や価値があること、そしてそれを理解してもらうためには、実際に体験を提供するか、行動で示し続けることが大切だと教えてくれます。宇宙開発は、単に科学技術の進歩だけでなく、私たち人間がより広い視野で地球や社会の問題を捉え、新しい解決策を見つけるための大きな可能性を秘めているのです。